物心つく前の記憶

物心がつくという言葉がある。
じゃあ物心つくまでの記憶なんて何も無いのだから、幼い子どもにはどんなに愛情を注ごうが、そうでなかろうが、あんまり関係ないんじゃないかって思う時がある。

大人になってから、ふとどうしようもなく寂しい気持ちになったり、一方でなんか温かい郷愁のような、家族と一緒にいた思い出が甦ることがある。その思い出は鮮明ではないのだけれど、例えば、夏の夕暮れ時に甚兵衛を着て下駄を履いて自転車をこぐ父親の後ろに座っていたこととか、冷たい雨に濡れて帰ったら母が風呂をわかしてくれていて、そのお湯が冷えきった体に暑すぎたこととか、夏の夜に遠くから聞こえてくる笛や太鼓の音色とか。

一歳半の息子にも安心して帰ることのできる思い出をたくさんつくってあげたい。