凍えるような街の一人きりの夜に

今週のお題「あったか~い」

社会人の始め頃、札幌で働いて一人暮らしをしていた。
帰宅するのも夜遅く、空いている店と言えばラーメン屋くらいしかなかった。
ある日、最寄りの駅を降りて家までの帰り道、ふと今日だけはどうしてもラーメン屋では晩飯を済ませたくないという強い衝動に駆られた。
吹雪の中、ツルツルの路面を家とは反対方向にしばらく歩いていくと、薄暗い灯りが仄かに灯る小料理屋のようなお店があった。
小料理屋なんて一人で行ったこともないし、多少の出費は覚悟し、勇気を出してお店に入った。
しかしそこではお酒を飲まなくても居ていいし、定食が千円前後でお腹いっぱい食べられた。
友人も知人も居ない一人きりの凍える札幌で、そこは以来私の大切な場所になった。